気狂いナースの注射芸
壱
壊されたのは、12年前。
切り始めたのは、8年前。
毎日のように、旭 美枝は剃刀を手首に当てた。
最早儀式でしかなく、其処にあった意味は忘却の彼方へ。
軽く引くと、紅い切傷が生まれる。
彼女の手首には同じ様な傷跡が無数に走り、治りかけている傷跡はかさぶたが小さくなっている。
その上に、交差するように紅い線を引いた。
また手首に当てた。
また手首を切った。
何時から、彼女は此れに安心を覚えたのだろうか。
しばらく自傷行為は行われた。
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