気狂いナースの注射芸
美枝の笑顔は、恋する少女のそれである。
「待ってたんです!」
「これ、あなたが殺したの?」
有藤は奈津子の死体を指差した。
「はい! ――――だって、有藤先生に近付くから」
「…………」
「私、有藤先生が好きなんです。それで、その―――」
「これは犯罪よ」
美枝の声に被せる様に言った。
美枝はそんなの解ってますよとでも言う様に笑って見せると、背を向けてナースステーションに入って行った。
「河野先生はどこなの?」
有藤も、美枝に声をかけながらナースステーションに駆け寄った。
「居ますよ、ほら」
美枝はテーブルの下に押し込んでいた河野を引っ張り出した。
「自分で少しは動きなさいよ」
手足を拘束しておきながらそれもないだろう。
河野がイモムシの様にテーブルから這い出ると、美枝は腕で引き寄せ、首に注射器を当てた。
「有藤先生、私…………こんな男好きじゃないんです」
それを聞いた河野の目が、一瞬涙で光った気がした。
こんな事されてるというのに、まだ好きなのか。
「河野先生も私も殺すの?」
「そんな! 貴女は殺さないわ」
「………なんで、こんな事をするの? 私が好きって、どういう事?」
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