放課後の寝技特訓・熊田先輩の横四方固め
主将が出て行くのを見届けると、熊田先輩の表情は優しいものに戻った。
熊田先輩は俺に言う。

「主将に何か言われたか?」
優しい表情ながらどことなく警戒しているような感じだ。
俺は少しぼかしたほうが良い気がして、

「いえ、お前、立ち技だけなら上狙えるぞって…」

熊田先輩の警戒しているような感じはまだとけない。

「それだけか?」

俺は全部言わないほうが良い気がして、
「はい、それだけです」
と答えた。

俺の返答に満足したのか、熊田先輩はやっと笑顔になり、
「そうか、じゃあウエイトトレーニングを教えてやるから、部室に行こう」
と俺の背中を押す。

「寝技の基本は筋肉だからな、今日から俺がみっちり教えてやるぞ〜」
さっき主将を睨んでたのとはうって変わって、熊田先輩はすっかり上機嫌だ。

俺はちょっとわけがわからなかった。
主将のあの言葉はなんだろう?
熊田先輩に気を付けろってどういう意味だ?

言葉の意味と可能性を考えてみる。

まさか…。

そうか、そうに違いない!

熊田先輩と主将は仲が悪いんだな。たぶんそうだ。

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