放課後の寝技特訓・熊田先輩の横四方固め
次の日、部活に行くと部室で主将から申し渡された。

・居残り練習は禁止
・練習中も熊田先輩と寝技の稽古は禁止
・部室に近いトイレを一人で使用しないこと

以上を守れないなら、昨日の一件は自分の胸にしまいきれないため顧問に報告せざるを得ず、夏の大会の出場にも支障をきたすとのこと。

俺は主将がなんでこんなことを言うのか、意味がわからなかった。

“寝技の柔道”と言い切った熊田先輩。

熊田先輩の柔道にふれるために入部した俺に、熊田先輩との寝技や居残り練習を禁止するなんて!
しかも一人でトイレに行くななど、嫌がらせかイジメなのかとも思った。
主将は俺を辞めさせたいのだろうか。

俺が憮然としていると、主将は言った。

「不自由な思いをさせること、すまないと思っている。これもお前の安全を考えてのことだし、そして夏の大会のためでもある。こらえてほしい」

年下の俺に深々と頭を下げる主将。

主将もまた器がでかい。
熊田先輩と負けず劣らず、主将も心の大きな男なのだろう。

昨日、なぜ主将は熊田先輩を叱ったのか。
今日、なぜ主将は俺にこんな指示をだしたのか。

わからないが、あるんだろう。
器のでかい主将と、器のでかい熊田先輩だ。
何か深い考えがあってのことなのだろう。

俺は託そうと思った。
俺はすでに、主将と熊田先輩に絶大な信頼をよせていたのだ。

素晴らしい。
尊敬できる男が2人もいる我が柔道部。
なんて素晴らしい、柔道部なんだ!


「わかりました、主将のおっしゃるとおりにいたします。尊敬する主将と、尊敬する熊田先輩のためにも、夏の大会に向け一生懸命練習に励みます!」
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