放課後の寝技特訓・熊田先輩の横四方固め
仕方ないわな〜。

サボって帰ろうかとも思ったんだけどさ、今日帰っちゃったらホントに顔を出しにくくなるもんね。

だから、青ざめた顔して部活に出てる俺。
主将には「顔色悪いぞ、風邪か?」なんて言われて“はぁ、そんなとこです”なんて答えた。

“熊田先輩にあやまったら、バカで嘘つきと言われてショックでお腹痛いで〜す”とは言えないもんね。

メンタル超弱な俺に、主将は優しいお言葉。
「風邪には気を付けろ。今度の大会はお前の仕上がりが鍵だからな」
うん、大きな男だ、主将は。
なんか少し軽くなった。

熊田先輩も昼休みの一件については、特に何も言ってこない。
まあ、普段通り俺とは目も合わせてくれないけどさ。

俺のことなんか気にもとめず、熊田先輩は主将を相手にもくもくと練習。
誰も寄せ付けない空気だ。

大会2週間前だからね。
なんか雰囲気がピリっとしてる。

俺もひたすら2年生と寝技の練習。
本番に向けて、少しでも弱点を補わなくちゃって。


夏の大会はね、団体戦だけ。
5対5の勝ち抜き戦で行なわれる。

うちの部は、主将と熊田先輩、2年生2人に俺のメンバー構成。
2年生の2人はたいして期待できないから、強い高校とあたれば、実質5対3みたいな不利な戦いを強いられる。

けど、熊田先輩の寝技は全国レベルだ。
主将も県レベルならそこそこ戦える。
俺の頑張りいかんでは、県大会突破も夢ではないんだよね。

主将が俺に言ってた“お前が鍵”ってのは、たぶんそういう意味なんだと思う。
俺が寝技でしとめられる前に、何人ぶっ倒せるかによって、うちの部が県大会を突破出来るかが決まるんだろう。

俺に課せられた役割は重い。
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