放課後の寝技特訓・熊田先輩の横四方固め
6月に個人戦の大会があった。

俺はその大会で衝撃の光景を目のあたりにした。

あれは熊田先輩の試合での出来事だ。
寝技で押さえ込みに入ろうとした熊田先輩は、暴れる対戦相手に手を焼いていた。
相手もなかなかの猛者らしく、すんなりとは押さえ込まれない。

抵抗する対戦相手、熊田先輩は一瞬目を光らせたと思うとすかさず相手のチョリソーに手を伸ばし、二度三度と強く握ったのだ。

そのスピードは電光石火。

熊田先輩の一連の流れは審判に気付かれる事もなく、対戦相手は“グッ…”と息をもらした後、完全に押さえ込まれ沈黙した。

熊田先輩の恐ろしいまでの勝ちに対するこだわり。

まさにあれこそ寝技のスペシャリスト熊田先輩にしか出来ない、“熊田スペシャル”だった。


俺は寝技は弱い。


しかし、あれを身につければいけるかもと思った。

あれは相手の寝技を防ぐ場合にも、最大の盾となるであろう。

俺が立ち技のスペシャリストになるためには、いつかあの熊田スペシャルを自分のものとしなければならない。

俺は以前からそう思っていたのだった。


熊田スペシャルとオペレーション・Cにおけるチョリソーのチェック。

目的こそ違えど、その手段に大差はない。

俺はこれから2年生のチョリソーをチェックしてやる。

そしてあわよくば、熊田スペシャルさえこの手に収めたい。

野心家だ。

俺はすっかり欲張りな野心家になっちまっていた。
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