HEY! ポール!
そして家路の前の交差点に差し掛かる途中、家の方角から激しいタイヤとアスファルトの摩擦音、続けて何かの衝突音が聞こえた。
・・・・・・・・・・・あ
・・・・・・・・・あ
あ。
・・・・家にバスが突っ込んでいた。奇抜なデザインのバスだった。
私物が散乱している。思い出の品がたくさん詰まった部屋なのに・・・
「やっべーやっちゃった!」
ポールがニコニコと自分がかわいいと意識した笑みを浮かべ私に歩み寄る。
「いやぁーちょっと俺も、なんか食べ物でも買って食べようかなと思ってピザの宅配呼んだら、手違いでバス呼んじゃったよ!たまにやっちゃうんだよね!メンゴ!」
ポールが何モノなのか、どこの世界のモノなのかは分からない。私はとにかく今はこいつへの怒りで我を抑えられなかった。
私はしばらく、家を散策し台所(らしき所)にあった果物ナイフを取り出し、ポールをザクザクに切り刻んだ。
そして最後にあのカップルの落書きのところにシャレ程度に
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「クニエ/ハヤ■ク いつまでも辛く×あれ」
カエレ
と削ぎ足した。
そして、ポールはアパートの横のごみ収集所に捨てた。多分もう何も言わないだろう。ただのポールなんだから。ポールに口無し。それが当たり前だ。
私はアパートに突っ込んだバスに乗り込み、衝突の衝撃で意識の無い運転手を退かし明け方の夜道を走り出した。
帰る場所など何処にもない。私はただ一本道を進んだ。