オフサイド


それは、前を歩く榊くんだった。 


「えぇーっ?!
たまたま駅で一緒になって、帰ってただけだよ!」


「菜摘ちゃん、浮気はよくないよ!」


「……う、う、浮気?
そんなのするわけないよ。本当に偶然、一緒になっただけだから」


「ちょっと耳にしたんだ。菜摘ちゃんが最近、茶髪の男と歩いてるって!まさか……と思っていたら今日、本当に俺たちのすぐ目の前にいるからさ、驚いたよ」

「――えっ?それは友達があの人のことが好きで……」


必死で弁解するものの、それが却って、言い訳じみていた。 


薫の付き添いとは言え、榊くんを追い掛けていたのは事実だし、他人から見たらそう誤解されても仕方ないのかもしれない。


噂とはいえ、そんなことが裕也の耳にでも入ったら……。 




< 104 / 362 >

この作品をシェア

pagetop