オフサイド


肩を落していると、ポンっと背中を叩かれた。 


「嘘だよ!」


「……嘘?」 


頷くと、由香里は続けた。

「菜摘が浮気するわけないことぐらい私たちが知ってるよ!たぶん、今日みたいな光景を目にした人が噂を広めたんだよ。噂って、あることないこと広がるから怖いよね」


「……うん」


由香里の言う通りだ。


火のないところに煙は立たない。


やっぱり、噂の原因を作った私にも責任はある。 


難しい顔になりながら、バッグからガサゴソと定期を取り出しているときだった。


「じゃ、お先」と、今まさに話題に上っている人が後ろを振り向いた。 



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