オフサイド


「あっ……」

「あっ!恵介じゃん!」


真吾くんの言葉と被り、私の言葉は簡単に打ち消された。


……へっ?どういうこと?二人とも知り合い? 


「おっ!真吾、久しぶり!今、帰り?北高サッカー部はどうだ?」


「まぁまぁだな。みんなあんまりヤル気ねぇし。恵介、練習は?」


「今からだけど」


すっかり話し込んでいる二人の姿を、由香里と二人、ポカンとしながら交互に見つめていた。


「なーんだ!菜摘ちゃんの噂の浮気相手って、恵介だったんだ!そりゃあり得ねぇわ!恵介はオンナ嫌いで有名だからな」


「うるせぇ!」


笑いながら話す真吾くんに蹴りを入れた榊くん。


でも、そんな彼も笑っていた。 


初めて見た。――榊くんの笑っている姿。案外、可愛い顔をしている。 


私も、思わず笑ってしまった。



< 106 / 362 >

この作品をシェア

pagetop