オフサイド
黒い門扉を開け、玄関ポーチに続くタイルの上を歩きながらバッグから鍵を取り出した。


誰もいない玄関の鍵穴に鍵を差し込み、扉を開けると、すぐさま二階の自屋へと向かった。


手に提げたバッグを下ろし、制服のままベッドに飛び込んだ。 


枕元に飾られた写真立てに手を伸ばし、そこに映る裕也の顔を指先でなぞった。 

こちらに向け、白い歯を見せ、ガッツポーズする裕也――。  


最後の総体戦で、優勝を決めたときのヒトコマだ。 

同じサッカー部員だった岩崎くんのお父さんが撮ったものだと聞いた。


転校先から手紙とともに送られてきた、裕也からの唯一のプレゼント。



緑の芝生の上で走り回る青いユニフォームを着た裕也の左腕には、しっかりと黄色のキャプテンマークが付けられている。



まだ、裕也の気持ちを知り得なかったあの頃を映し出す大切な写真。




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