オフサイド
あんまり気乗りしないけれど、薫のためだもんね。 

鏡の前に立ち、ハンドソープで入念に手を洗うと、使い捨てコンタクトレンズの蓋を開けた。


そっと、人差し指に載せ、左手の親指と人差し指で目蓋を広げ、瞳にレンズをゆっくり装着させた。 


数回、目をパチパチさせて鏡を覗き込むと、途端に視界が明るくなった。 


つい最近、メガネを卒業してコンタクトレンズのデビューを果たしたばかり。 

赤いフレームのメガネは中学のときからお気に入り。

でも、高校生になってイメチェンもしたかったから。


思い切って、チャレンジしてみた。


初めて、コンタクトで登校した日――みんなの反応が怖くて、ドキドキしながら家を出たのを思い出す。


学校へ着くなり、みんなの視線が一斉にこちらに向けられてドキッとしたのをいまだに覚えている。



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