オフサイド
店内は、ヒヤッと身震いするほどに冷房で冷やされていた。 


手前から野菜コーナー、鮮魚、精肉と続く。


新鮮さを保つために放たれる冷気が、カートを押す私の身体まで冷やし、長袖が欲しくなるほどだった。


隣に並ぶ榊くんは、平然とした様子で、次々と野菜に手を伸ばしている。


ブルブル震える私に、トウモロコシを手にした榊くんが「もしかして、寒い?」と聞いてきた。


「うん。ちょっとだけ……」

「そうだな。さっさと買い物済ませて外に出よう」


「うん」


榊くん、私のことまで気遣ってくれるなんて、案外、優しい人かも……。



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