オフサイド
「どこか行きたいところある?」


片手で自転車を押す裕也に尋ねられ、首を振った。


「特には……」


裕也と一緒にいられるならどこだって構わない。


1分でも1秒でも長くいられたらそれでいい。


「じゃあ、俺んち来る?」

「えっ?」


そりゃ、行きたいけど……いろいろなことが頭を過り、返事に窮する。


「なんか、変な想像してただろう?」


「まさか……!」


首を竦め、慌てる私の頭を、伸ばした左手でクシャクシャと撫でると、高らかに笑った。


「冗談だよ!今、親戚が集まってるから家に行くのは無理!ゆっくり話もできないからな」


「えっ?それならすぐに帰らないといけないんじゃない?」


「いや、大丈夫。菜摘の方が大事だから」


さらりと言い放つ裕也に、さらに心臓が飛び跳ねた。 


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