オフサイド
「このまま、海に行こうか」

「うん」


海岸通りの賑やかな道を逸れ、一本奥まった住宅街の細い抜け道から海を目指した。


「後ろ、乗れよ」という裕也の誘いには応じず、横に並んで歩くことを希望した。 


さり気なく歩道側を歩かせ、その隣で自転車を押す裕也。 


たったそれだけのことなのに、嬉しくて頬が緩む。


だんだんと目の前の光景が広がっていき、漁港へと繋がる道までやって来た。 

潮の薫り、打ち寄せる波の音、何艚もの停泊する漁船。


見慣れた風景が、今日は特別なものに思える。


「もう少し歩ける?」


頷くと、漁港にある管理事務所の入り口脇に自転車を停め、先を急いだ。



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