オフサイド


デッキを行き交う乗客や車掌の声は遠退くばかりで、裕也の優しい眼差しに次第に緊張が解けていく。


ふぅーっと大きく息を吐いたあと、カサカサに乾いた唇を舌で潤した。


迷惑がられると思っていたから、少しばかりホッと胸を撫で下ろした。


……よかった。怒ってない。


二人の間を流れる空気が温かいものに感じられた。


胸の鼓動は、いくらか落ち着きを取り戻した。



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