オフサイド
右手を掴んだまま、私を見つめる裕也。
吸い込まれそうなその瞳に一瞬、たじろきながらも、目が逸らせなかった。
「菜摘は、俺の彼女だ。他の奴らには指一本触れさせない。あと二年半、待っててくれるか?」
真顔で話す裕也に、瞬きさえ許されない雰囲気が漂っていた。
握られた右手は電流が走ったように、ジンジンしている。
心臓は最高潮に高まり、肩で息を吸うのがやっとだった。
もちろん、私の答えは――
「待ってるよ。ずっと待ってるよ、裕也のこと。当たり前でしょ!」
ちょっぴり強気な私に、大きく頷いた裕也。
その瞳が、心なしか、潤んでいるように見えた。