オフサイド
辺りは、すっかり夕闇に包まれていた。


車のヘッドライトを頼りに歩道をひた走る。


――と、


急に、国道から市民体育館へ通じる細い抜け道に自転車は左折した。


「ここ通るの?」


「あぁ。国道だと、車の音に掻き消されて菜摘の声が聞こえにくいから」


「………」


たぶん、今の私は頬を赤く染めているだろう。


よかった……裕也に見られなくて。


背中越しの会話に救われる。



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