オフサイド
こんなにも近くにいるのに、明日からまた離ればなれになるなんて……。 


分かっていることとはいえ、やはり認めたくない事実だった。 


自転車を押しながら裕也は押し黙ったままだった。


その隣で、私も同じように歩を進めた。 


時折、木々の隙間からライトを放つ車の影が見え隠れする。


それは、幹線道路が近いことを識らせるものだった。


永遠に続いてほしかったこの時間も、いよいよ別れの時が迫ってきた。


離れがたい思いとは裏腹に、裕也は笑顔で別れを告げた。


「菜摘、ここでいいか?」

「うん……」



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