オフサイド
「菜摘の浴衣、可愛いね!」
「ありがとう。薫もよく似合ってるよ!田口くんが見たら惚れ直すかもね」
「そうかな?そうだといいんだけど」
「絶対、可愛いって言うよ!今日は帰れないかもよ〜!」
悪戯っぽく薫をからかうと、薫もまんざらでもない様子だった。
「うん、それもいいね!……なんちゃって!」
濃紺地に黄色の帯を締め、薄紫の大きな朝顔が描かれた浴衣に身を包んだ薫。
黄色がとても映えていて、薫そのもののようだった。
そして、私の浴衣はおばあちゃんが仕立ててくれたもの。
同じく紺地に金魚をあしらった古典柄で、赤い帯を締めた。
控えめな柄だけど、大好きなおばあちゃんからの贈り物に、喜んで身に纏った。
お互いに褒め合い、冗談を言い合いながら控え室のドアに手を掛けた。