オフサイド
メニューを手にしていた薫が、擦り寄った。 


「榊くんを落とした、超天然女だって!」 


「えっ……」 


「何それ!ひどすぎる!
あり得ないよ。ただの僻みじゃん!」


私を庇う薫の声と被った。

まさか、自分の知らないところでそんな噂が立てられていたなんて……。


驚きとショックで、軽い眩暈を起こしそうだった。


「今日だって、女嫌いで有名な榊くんが菜摘と歩いてるんだもの、誰だってそう思うんじゃない?」


「あれは、そういう意味じゃないんだけど…」


「ねぇ、もう一度確認するけど、菜摘たちは付き合っていないんだよね?」 


「うん、そうだけど」


「じゃあ、私、頑張ってみようかな。菜摘も応援してくれる?」


奈緒の大きな瞳が、私を捕える。



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