オフサイド


驚いて、動きが止まった。


ザザァーっと流しに打ち付ける水の音だけが、やけに谺する。


廊下を楽しそうに行き交う人の群れからは完全に遮断されたように、二人の間は静まり返っていた。 


「……そんなことないです」

弱々しく話す私に、榊くんは言葉を覆い被せた。 


「見りゃ分かるよ!薫ちゃんに頼まれて来てみたけど、来ない方がよかったみたいだな。ごめんな、悪かったよ。
でも、念のため、保健室に行った方がいいよ。それじゃ」


「――ちょっと待って!」


廊下を歩きだそうとする榊くんの背中に、それを引き留めるように声を掛けた。 


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