オフサイド
厳しい表情で私を見つめる裕也から、何か決意のようなものが感じられた。 


でも、それは…… 


私にとって、とてもいい話だとは思えなかった。 



そんな気持ちを裏隠すように、「何のこと?」などとおどけてみたけど、裕也に笑顔はなかった。 



「ここじゃなんだから、屋上に行かないか?」 



何か口にしようものなら、この不安な気持ちから涙がどっと溢れてきそうで、口をつぐんだままだった。



車椅子に乗り込んだ裕也は、返事を待たずして、先を行こうとした。 



その背中を追い掛けるように、手にした荷物をギュッと握り締め、病室を出た。 



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