オフサイド
真っ白なシーツがバサバサと揺れる屋上。 


地上数十メートルの高さからは、都心が一望できた。

手を伸ばせば、空まで届きそうな気がする。


晴れ渡った秋空とは反対に、心の中はどんよりとした曇り空だった。


「気持ちいい風だなぁ」


独り言のように呟く裕也の少し後ろを歩いた。


風に靡かれ、髪の毛が頬にまとわりつくのを指先で梳くいながら。


洗濯物の間を擦り抜け、丸いテーブルと椅子の置かれたコーナーまでやってくると、私たちの他には誰もいなかった。




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