オフサイド
突如、襲った物音に目を瞑り、身を縮めた。



ギュッと握られた裕也の両手に、怒りのようなものを感じ、


否定すればするほど、裕也の心が離れていくようにも感じられた。



こんなにも近くにいるのに、心だけが遠くにあるように感じられて……。



何か、映画のワンシーンでも見ているかのようだった。


「……別れたくない」



ようやく絞りだした声。


でも、裕也の耳には届かなかったようだ。



「俺たち終わってたんだよ、去年から。あの時と同じだろう?」



ちょうど一年前の出来事が頭を掠め、凍り付いた。


それ以上、口にすることは憚られた。





< 257 / 362 >

この作品をシェア

pagetop