オフサイド
裕也の彼女に落ち着いたはずなのに、元カレ・直人から連絡を受けると、断れずに一人で会いに行っていた私。


でも、これが『裏切り』になるなんて、その当時は、これっぽっちも思っていなかった。


でも、後ろめたさがあったのは事実。


裕也には話せなかったから。

裕也に話したら、当然いい気持ちはしないだろうし、心配すると思ったから。



「やっぱ、来てくれたね!   サンキュー!」



二人が向かったのは、市民体育館の駐車場。


平日ということもあり、人は疎らだった。


大した話をするわけでもなく、互いの近況を話しているうち、直人は母性本能をくすぐることをさらりと言い放った。 


「やっぱり、菜摘と話してると癒されるよ。菜摘の彼氏になる奴は、幸せだよな」


「………」


頬を真っ赤に染め、俯いた。


別れたとはいえ、元々、好きだった相手から伝えられる言葉は、胸の奥底に響き渡った。 



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