オフサイド
「菜摘……お前、俺のこと裏切ってたのか?」



ゆっくりと奏でる裕也の低い声が、一段と凄みを効かせる。


ううん、と首を横に振り、否定したけれど、裕也にはその声は届かなかった。



「なんで、俺に黙って直人と会ってたんだよ!やっぱり、まだ直人のことが好きなんだろう?馬鹿にしやがって……」



「ち、違うよ。そんなつもりじゃ…」


か細い声で答えたけれど、裕也は聞く耳をもたなかった。 


「お前とは二度と会わない。直人、俺、先に帰るわ。じゃあな!」



捨て台詞を吐き、自転車に跨ると、裕也は一度も振り返らずに私たちの元から走り去った。 



いくら自分が蒔いた種とはいえ、こんなことって……。




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