オフサイド
新幹線の窓から見えた富士山。
「うわぁー、富士山だ!」
白い雪を被った富士山が太陽の光に照らされ、眩しく輝いていた。
すごく綺麗だった。
はしゃぐ私の隣で繋いだ手を離さず、穏やかに微笑む裕也。
「今日は天気もいいから最高だな!」
「うん!」
本当に綺麗だった。
何かのパンフレットの表紙にでもなりそうなくらい。
この日の富士山の美しさを忘れないよう、しっかりと目に焼き付けた。
“二人だけの思い出”になるはずだから。
裕也のダウンジャケットを二人でお腹の辺りに掛けて、その中ではずっと手が繋がれたままだった。
裕也の手の温もりと優しさを感じて、幸せな時間だった。
ねぇ、裕也……
裕也は、あの日の光景を今でも覚えていますか?