オフサイド
……うっそー!なんで!? 


水槽に張りつくようにマグロを見ていた私のすぐ後ろに、榊くんがいたのだ。 


ガラスに両手をついて、回遊するマグロを眺めている。 


周りから遮断するかのように、榊くんの身体にすっぽりと収まっている格好だ。 


無意識のこととはいえ、異様にドキドキしてきた。 


身体が少し動くたび、放たれる香りに鼻孔をくすぐられる。


それを悟られぬよう、身体をマグロに向き直し、水槽を眺めていたが…… 



気持ち良さそうに泳ぐマグロとは対照的に、胸がドキドキして落ち着かなかった。




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