オフサイド
「元々、運動は好きだったし、その頃、練習は楽しかったよ。上級生にも可愛がってもらったし、一人っ子の俺にしたら、家でばあちゃんやお袋と遊んでいるより何倍も楽しかったからね」 


私には弟が一人いる。
時々、憎たらしいことも言うけど、ずっと姉弟仲良くやってきた。 


少しでも私の元気がないと弟の勘が働くのか、大輝なりに励ましてくれることもある。


親とはまた違う、姉弟のよさ。でも、榊くんは一人っ子。


一人っ子の寂しさはよく分からないけど、きっと人には言えないこともあるんだろうな……。


「俺さぁ、こう見えて結構負けず嫌いなのね」


「えっ?」


「意外かもしれないけど、やるからには一番になりたくて、こっそり練習するタイプ!
人に『頑張ってるね』とか言われるのが嫌なんだよね。人に頑張ってるところを見られるのも、ね。

だから、ユースでも絶対にレギュラー獲ってやる!と思ってたから、学校へ行く前も帰ってきてからも、暇さえあればボールを蹴ってた子どもだったよ」


おどけて笑う榊くん。


普段はクールに見えるけど、実は内に秘めているものが熱くて、そんな榊くんから目が離せなかった。  



< 306 / 362 >

この作品をシェア

pagetop