オフサイド
「自分で言うのもなんだけど……この辺の地域ではわりと名前も通ってたし、トレセンの強化選手にも選ばれて、結構いろんな奴らと知り合いになったんだ」



確かに、自慢のようにも聞こえるけど、榊くんが話すと、そう思えないから不思議。


足を組み直した榊くんは、チラッとこちらを見た。


「中3の夏休み、トレセンの合宿で裕也と親しくなったんだ」


「――えっ?」


緊張が走り、目を見開いたまま動けなかった。  


「それまで、テクニックだけはすごいけど、根性が悪かったり、サッカーに対する考え方が俺とは違ってたりする奴が多かったんだけど……あいつは違った。

最初からウマが合ったんだよな。なんていうか、一緒にいて居心地がいいし、お互い考え方が似てるからさぁ」


あぁ……。だから、初めて会ったときから、榊くんに嫌な印象をもたなかったんだ。 


どことなく、裕也に似ているような気がしたから。 

二人とも、群れに染まらず一匹狼のようなところがあるから。 




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