オフサイド
徐々に近付くホーム。
名古屋で降車する人たちが大きな荷物を抱え、次々と立ち上がった。
私も立たなきゃ……
でも、ここを離れたくない。
裕也のそばから離れたくない。
ダウンジャケットを顔の辺りまで被った私は、ずっと下ばかり見つめていた。
「菜摘……こっち向いて」
ふいに、耳元で裕也に声を掛けられた。
「えっ…」
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
思わず、頬っぺたに手を当てた。
「ビックリした?」
左側の頬っぺたが、カァーッと熱くなるのを感じた。