オフサイド
「大丈夫?」


「うん。目に砂が入ったみたい。コンタクトがゴロゴロしてるだけだから大丈夫だよ」

 
人差し指で目の辺りを擦りながら、涙を隠すために嘘をついた。


そんな嘘にも、彼は気付かないフリをした。 


「あそこに水道があるから、行ってみる?」


指差す方向には、ザァーっと勢いよく蛇口を捻り、水を溢れだして裸足で遊ぶ、幼い子供たちの姿があった。  


時折、子供たちの黄色い歓声が上がる。


とても楽しげな声だった。

太陽に反射されてキラキラ輝く水の結晶と、子供たちの笑顔が眩しい。 



「大丈夫、ありがとう。もう痛くないから」


「そっか。じゃ、飯でも食いに行こうか?」


「うん」 


穏やかな潮風と榊くんの優しさに背中を押され、私の心には暖かな火が灯された。



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