オフサイド
「お次でお待ちのお客様、こちらのレジにどうぞ」
声を掛けた途端、私の中で焦りが生じた。
「あれー、菜摘じゃん!こんなところでバイトしてんの?」
「うん、まぁ…ちょっと知り合いに頼まれて」
言葉を濁し、その場を取り繕ったつもりだった。
でも、相手はお構い無しだった。
「ふーん、そうなんだ。学校には許可願い出してるの?」
「えっ、いや、それは……」
「そうだよね。普通、わざわざ出すわけないよね」
口籠もる私とは対照的に快活に話すのは、奈緒だった。
真っ黒に日焼けしたサーファー風の男の隣で、この季節にはそぐわない色白の肌を露出させていた。
なんでだろう。
目の前に立つ奈緒のことをまともに見ることができなかった。