オフサイド


「奈緒の友達?」 


「うん。学校が一緒なの」 


「そっか。菜摘ちゃん、だっけ?よろしくね」


財布から壱万円札を抜き出したその男は、そう話した。 

茶髪のロングヘアーに黒いサングラスをかけた男は、奈緒よりも年上のように見えた。


お釣りを渡すとき、その男の胸元で揺れるシルバーのアクセサリーが目に留まった。


十字架だった。


「ありがとうございました」

「じゃ、またね!」  


甘い香りを残したまま、二人は店を出ていった。 



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