オフサイド
プシューと開かれた扉。
「またな…」
「またね…」
短い会話のあと、繋いだ手を躊躇いながらゆっくり離し、ホームへ降り立った。
ドアが閉められた窓ガラス越しに、裕也の唇が動いた。
――ナ・ツ・ミ・ダ・イ・ス・キ
涙腺が決壊して、涙が止まらない。
聞こえた…聞こえたよ……。
裕也、私も大好き。
裕也の乗った新幹線が見えなくなるまで、左の頬に手を当てながらずっとホームから見送った。
佐伯菜摘(さえきなつみ)・15歳の冬のことだった――。