オフサイド



――と、ザクザクと石を踏み締めて歩く音が聞こえる。 


不意に後ろを振り返ると、長身の若い男が私の後ろを歩いていた。


西日に照らされ、顔がはっきりと見えない。


この道を通る人がいるなんて、かなり珍しい。


地元の人でないと知らない、抜け道だから。


だんだんと、私とその人との距離が短くなる。


なんとなく嫌な感じがした。

並んで歩くのも嫌だし、サッサと帰ろう。


自転車に跨ったときだった――。



「ねぇ、菜摘ちゃんだよね?」 


「――えっ?」 



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