オフサイド
怖くて、怖くて……。
走ってここからすぐに逃げ出したいのに、その一歩が踏み出せない。
――ジャリ。
男が動いた。
小刻みに震える私を、男は躊躇わず、引き摺るように遊歩道から芝生へと連れ出した。
わずか二メートル足らずの距離。
男の手を振り払おうと微かに抵抗を見せたけど、無駄に等しかった。
その間(かん)も止まらない、身体の震え。
――ドサッ。
「きゃっ!」
短い悲鳴が洩れた。
突然、掴まれていた腕を離された私は、芝生に倒され、尻餅をついた。
そこに近付く、男の顔。
怖い。怖いよ……助けて。
誰か……誰か、助けて。
お願いだから、助けて。
助けて、裕也―――…。