オフサイド


「そんなに怖がらなくてもいいじゃん。嫌がるようなことなんてしないからさ」


唇を押し付けようとする男から、咄嗟に顔を背けた。 


「おいおい。あんまり焦らさないでくれよ。俺、気が短いんだからさぁ」


シルバーのリングが嵌められた大きな手で、ぐいっと顔を正面に押し戻された。 

間近に迫る男の顔。


そのとき、胸元できらりと何かが光った。


――あっ!あのときの……。


ひんやりとした男の手が、Tシャツの裾から延びてくる。


ゾクッとした。


「いや……お願いだから」

「そんな顔されたらますます興奮してくるね。大丈夫だよ。おとなしくしてたらすぐに終わるからさ」


「やめ…て……おねがいだから…やめて……」


泣きながら懇願するけれど、男は全く相手にしようとしなかった。



< 337 / 362 >

この作品をシェア

pagetop