オフサイド
――そのときだった。
「何、やってんだ!やめろー!」
自転車がキキキーっと勢いよく止まると、私に覆い被さっていた男の身体が無理やり引き離され、宙に浮いた。
「何すんだ、てめぇ!邪魔すんな!」
「うるせぇ!そっちこそ、何やってんだよ!」
――ボンッ。ドスッ。
鈍い音が何度も聞こえる。
恐怖で身体を小さく丸めた私は、目を瞑ったまま、小刻みに震える身体を抑えることができなかった。
ガチガチと歯列が音を立てる。
「なんだよ、話が違うじゃねぇか!誰とでもヤラせる女なんじゃねぇのかよ!……クソッ。覚えてろよ!」
男は吐き捨てるように言い放つと、その場から足早に姿を消した。