オフサイド
「さっきの男、菜摘ちゃんの知り合い?」
首を横に振った。
「じゃ、心当たりは?」
黙ったまま、俯いた。
心当たりといえば……
それはただ一つ。
あのときの男に違いない。
でも、なんで私がこんな目に遭わなきゃならないの?
その理由がわからない。
私のこと、いまだに恨んでいるということ?
全く予期せぬ出来事に、ただただ驚きと恐怖ばかりで……。
私は、俯いているより他はなかった。
「心当たりがあるみたいだね。言いたくなかったら無理に言わなくてもいいけど、このあとのこともあるから用心に越したことないよ。
これからはなるべく一人で出歩かないこと。今日みたいなバイトの日もね。
それから、この道は人通りが少ないからしばらく通らない方がいいね」
唇を噛み締めたまま、コクンと頷いた。