オフサイド


――翌朝。


「うわっ、ひっでぇ顔!」

「はぁ?何よ、いきなり!」


洗面所で顔を合わせた大貴が、いきなり訳の分からないことを口にし始め、私は顔を顰めた。


「姉ちゃん、もしかして男に振られた?」


「はぁ?あんた何、朝から訳の分からないことを言ってるの?」


朝っぱらから香水を体に撒き散らし、髪の毛をツンツン逆立てる大貴にイラッとしながら鏡の前に立った。

―――…!!


うわっ、なんだこの顔!

お岩さんのように腫れた瞼。

真っ赤に充血した瞳。


鼻を咬みすぎたのか、赤く爛れた鼻の下。


大貴でなくとも、これでは失恋に間違われても仕方ないかも。



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