オフサイド


「まぁまぁ、そう言わずに。
とりあえず、その顔、母ちゃんが心配するからなんとかしたら?」


「あ、うん。そうだね」


大貴は口は悪いけど、根は優しい男の子。


昔は私のあとについて回り、なんでも真似をする可愛い子だった。


女の子ばかりのおままごとに必ず参加していた大貴。

『大ちゃん、これケーキですよ。どうぞ』


『ねーね(お姉ちゃん)、ありがとう』


葉っぱと石ころでデコレーションされた砂のケーキを差し出すと、そのまま口に入れた大貴。


『うわぁぁぁぁぁん』


『あっ。ごめん、ごめん』

泣き出した大貴を水飲み場に連れていき、必死で砂を吐き出させた苦い思い出もある。


そんな大貴ももう中学3年生。


やっぱり姉弟だからかな。

弟だけど、私に何かあったのを直感的に悟ったのかもしれない。



< 350 / 362 >

この作品をシェア

pagetop