オフサイド
「まぁまぁ、そう言わずに。
とりあえず、その顔、母ちゃんが心配するからなんとかしたら?」
「あ、うん。そうだね」
大貴は口は悪いけど、根は優しい男の子。
昔は私のあとについて回り、なんでも真似をする可愛い子だった。
女の子ばかりのおままごとに必ず参加していた大貴。
『大ちゃん、これケーキですよ。どうぞ』
『ねーね(お姉ちゃん)、ありがとう』
葉っぱと石ころでデコレーションされた砂のケーキを差し出すと、そのまま口に入れた大貴。
『うわぁぁぁぁぁん』
『あっ。ごめん、ごめん』
泣き出した大貴を水飲み場に連れていき、必死で砂を吐き出させた苦い思い出もある。
そんな大貴ももう中学3年生。
やっぱり姉弟だからかな。
弟だけど、私に何かあったのを直感的に悟ったのかもしれない。