オフサイド
『……すみません。ご迷惑をおかけしますが、辞めさせて頂きます』
あれだけ楽しんでいたバイトも、新学期が始まるのを口実に辞めさせてもらった。
店長さんはとても残念がっていた。
『進路が決まったら、菜摘ちゃんまた頼むよ』
細い目をさらに細くさせ、微笑む店長さん。
娘のように可愛がってくれていたから正直、私も名残惜しかった。
でも……
バイトのたびにあの日のことを思い出して、私は精神的に追い詰められていった。
あの道を通るのはもちろん、一人で外出するのが怖くなって。
誰かに後を付けられているんじゃないか…とビクビクする毎日。
少しの物音にも身を縮め、脅える生活に疲れが増していった。
それからというもの、私はどこか魂が抜け落ちたような日々を過ごした――。