オフサイド
それから1ヶ月後――
桜の開花宣言とともに、私の受験も終わった。
結果は、見事合格!
これでようやく裕也に近付ける。
電話越しに合格を知らせると、裕也は自分のことのように喜んでくれた。
「頑張ったな、菜摘。
菜摘と俺の夢、どっちが先に叶うかな?」
「どっちだろう?先に叶えた人にはお祝いだよ!」
電話越しに流れる温かい空気。
高校を卒業したら、裕也の住んでいる土地を案内してもらう約束をした。
坂が多くて、路面電車の走るその街は、観光地としても名高い場所だった。
「すごくいいところだよ!菜摘にも見せてあげたいから一度おいでよ!」
裕也の暮らしている街に行けるなんて…!
その日を夢見て、希望が湧いてくる。
距離は離れているけど、心の繋がりが感じられて、中学生の私には十分すぎる言葉だった。