オフサイド
「菜摘ー、帰ろう!」
すでに荷物を手にした薫が私のところまでやってきた。
薫とは、高校入学を機に親しくなった。
出席番号が近いことからよく話すようになり、今では毎日一緒に帰宅している。
「相変わらず早いね、薫は!」
「当たり前じゃん!急がないと、榊くんたち帰っちゃうよ!」
「……また榊くん?」
榊くんとは、近くにある西高に通う、薫の憧れの人。
電車で見かけてから様々な情報を駆使して、ようやく名前や学年を突き止めた。
今のところ彼女はいない……らしい。