オフサイド


「誰、だれ?」


と、身体をすり寄せ、小声で聞いてくる薫。


榊くんと一緒にいた修くんが気になったのだろう。 


「中学のときの友達」


「中学のときの…?菜摘の彼氏じゃなくて?」


「えっ?まさか……」


突拍子もないことを薫が言いだすものだから、慌てふためいた。


薫には、裕也のことを話していなかった。


遠く離れた人のことを口にするのは、何となく憚れるような気がしたから――。


もしかしたら……


親しくなった薫に対し、まだ心を許せていなかったのかもしれない。


そんな私たちに、修くんの隣に座る榊くんが視線を送っていたのを感じた。



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