オフサイド
季節は、紫陽花の花開く時期を迎えた。
ここ数日、雨降りが続いていたから駅までの道のりをバスで通っていた。
時間より少し遅れたバスに乗り込むと、学生でごった返しており、身動きするのもやっとだった。
掴まる場所が見つからず、ブレーキのたびに濡れた傘を頼りに両足で何度も踏張った。
湿気と高温とで、蒸し暑い車内。
早くこの空間から立ち去りたかった。
もうすぐ終点だ――というときにバスが大きく左カーブを曲がった。
その揺れに耐え切れず、危うくバランスを崩しそうになり、私はよろめいた。
――そのときだった。
誰かが私の腕を掴んだ。