オフサイド
「キャッ」
短い悲鳴とともに掴まれた腕の先を見ると、そこには榊くんがいた。
咄嗟に、彼が助けてくれたことを悟った。
「あっ…ありがとう」
なんとも間抜けな挨拶をすると、榊くんは少しだけ首を傾げるような仕草をした。
相変わらず、榊くんは無口な人だった。
こんなに近くにいたのなら、もっと早くに声を掛けてくれたらよかったのに。
あれから薫とともに、何度か駅で顔を合わせていたけど、会話らしい会話をしたことがなかった。
今一つ、彼の性格を掴めないでいた。