オフサイド
しばらく、そんな榊くんから目が離せなかった。
「俺がこんなこと言ったらおかしい?」
「い、いや…おかしくないけど」
心の内を見透かされているようだった。
「俺の知り合いに、自ら過酷な状況に追い込んだ奴がいるんだ。そいつのサッカーに対する想いは、並大抵じゃない」
話を聞きながら、裕也の顔がふと頭に浮かんだ。
予報では、九州も雨のはずだからきっと今頃、室内で筋トレをしているだろう。
練習後、下宿先までの5キロの道のりをランニングで帰っていると言っていた裕也。
周りの友達は、皆、自転車だというのに――。
「そうだね。中には、そういう努力を惜しまない人もいるよね」
「あぁ。だから、金があるとかないとかで、人を判断するのは止めた方がいいよ」
「……うん」
素直に頷くしかなかった。